高金利の仕組み預金のリスクと注意点 見えないリスクが内包されたハイリスク商品

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著者:しょうこちゃん

銀行で販売されている預金商品の中でも気を付けたい商品の一つに仕組み預金というものがあります。

いくつかタイプがありますが、「一定範囲内で期間の定めがない円定期預金」「やたら金利の高い外貨預金」という二つのタイプが良く見られます。これらのタイプの仕組み預金は一見、金利が高く見えますが、見えづらいところにリスクが内包されています。利用する場合はリスクをしっかりと把握した上で利用しましょう。

仕組み預金とは?

仕組み預金は名前は様々ですけど多くの銀行で販売されています。

銀行の「ランク制度」においても仕組み預金を○○万円以上利用している人は優遇するなどという特典を設けていることも多く、また見た目の金利も高いので気になっている方もいらっしゃるかもしれません。

ところが、こうした仕組み預金は実は結構ハイリスクな商品です。

仕組み預金は通常の預金に「オプション」をセットしたもの

仕組み預金というのは通常の預金商品に対してオプション取引のオプションをセットにしたものです。オプションというのは「権利」を売買する取引です。仕組み預金は預金者が持つ「権利」を銀行に対して売却することで代わりに通常よりも高い金利(オプション料に該当)を受け取ることができるという商品なのです。

これだけだとよくわからないと思いますので、実際の仕組み預金商品を見ていきましょう。

定範囲内で期間の定めがない円定期預金

これは「コーラブル預金」あるいは「マルチコーラブル預金」と呼ばれるタイプの仕組み預金となります。日本語だと「満期日繰上特約付定期預金」というように呼ばれますかね。

具体手例として以下のSBI新生銀行の「パワーステップアップ預金2」を例示します。

これま満期は10年で、年数が伸びるほど段階的に預金金利が上がるという定期預金で巣。ただし、満期前に預金者都合での解約はできません。一方で銀行都合で早期に満期となる可能性があるという預金商品となります。

このタイプの仕組み預金では、「満期を繰り上げる権利を銀行側に売却する代わりに高めの金利を受け取る」ということになっているわけですね。受け取れる金利が相対的に高いのはそういうわけです。

じゃあ、どんなリスクが内包されているのかというと、以下のようなリスクがあります。

  1. 最長10年間資金は固定され、預金者都合で解約できない
  2. 金利が上昇しない場合は短期で銀行に解約され運用ができない
  3. 一方で金利が上昇した場合、10年間固定され預金者は機会損失を被る

この3つですね。

(1)は結構重要で、定期預金はいつでも解約できる。という認識の方もいらっしゃいますが、こうした仕組み預金はその性質上途中解約は不可です。そのため、どこかのタイミングで必要になる資金については不向きです。

気づきにくいリスクは(3)の部分です。たとえばインフレになり金利が上昇して2%~3%という定期預金が仮に当たり前になったとしても、預けた資金は10年間は0.7%という低い金利で運用し続けなければならないというわけです。

このタイプの預金では「将来の金利上昇による収益性上昇を手放す代わりに、現時点で相対的に高い金利を受け取る」という約束をするタイプの預金となります。

ここ20年くらいは金利が穏やかに低下し続ける時代だったため、このタイプの仕組み預金のリスクが顕在化することはありませんでしたが、今後インフレが進んだような場合はこうした仕組み預金が資産運用の足を引っ張るケースが出てくる可能性があります。

満期特約型の仕組み預金のメリット、デメリット

メリット

  • 預金時点では相対的に高い金利で運用できる

デメリット

  • 市場の金利が上昇すると相対的に低い金利で長期資金が固定される
  • 一般的な定期預金と異なり預金者都合では途中解約できない

販売されている主な同タイプの仕組み預金(満期特約型)

  • プレーオフ(住信SBIネット銀行)
  • プレミアム金利円定期預金(auじぶん銀行)
  • ステップアップ10年(ソニー銀行)
  • スタードリーム円定期仕組預金10年(東京スター銀行)
  • 楽天エクステ預金(楽天銀行)

極一例ですがこんな感じです。基本は10年で満期を銀行側が決められるというタイプですね。住信SBIネット銀行やauじぶん銀行だと、このタイプの外貨預金バージョンもありますね。

短期なのにやたら金利の高い外貨預金(外貨仕組預金)

続いては短期(1カ月くらい)の運用なのにやたらと金利の高い外貨預金がありますね。続いては事例として住信SBIネット銀行が提供している「オセロ」という商品で商品性を紹介します。為替オプション付き預金と呼ばれるタイプの仕組み預金です。

このタイプの外貨預金(仕組み預金)の特徴は受け取る通貨が為替レートによって変わることがあるという点が通常の外貨預金と異なる点です。

  • 預け入れ資産は外貨(たとえば米ドル預金)
  • 満期時に受け取るのは円高なら外貨、円安なら円

というようになっています。この仕組み預金を預金者(投資家)の特徴を先に述べると「外貨預金をして為替レートの変動に伴う利益は放棄する(ただし損失は放棄しない)代わりに、相対的に高い金利を受け取る」というタイプの預金です。

解説画像が住信SBIネット銀行にありました。↓の画像を引用して商品性をもう少し詳しく紹介します。

現在の為替レートは1ドル130円。オセロの金利は8%。ちなみに通常の米ドルの1カ月定期預金は3.1%です。つまり、上乗せ分が受け取ることができるオプション料ということになります。

この条件これから100万円を預けて1か月後の満期時点の評価額(円価格+利息)を示したものが下記のグラフになります。ちなみにこれは外貨預金をしながら、通貨オプション取引において「米ドルのプットオプションを売っている」というような状況と同じです。

為替レートが有利な方向に行ってもその利益は放棄する代わりに利息がちょっと高いという感じだとこういう風になるわけです。そのため本商品は「1か月後の為替レートは現行とほぼ変わらないだろう」という想定を持った人のためだけの商品ということになります。

ちなみに、この手の仕組み預金を販売する銀行からすれば為替レートが円安になればなるほど利益が増えるようになっていますね。一方で支払うコストはわずか年率にして5%(1カ月の期間なら0.41%)です。1か月後の為替レートによる銀行の儲けはグラフにすると以下のようになります。

ちなみに、こうした取引自体は私たちでも可能です。通貨オプション取引において「米ドルのプットオプションを買う」という取引をすれば銀行側と同じような損益グラフを自分自身のポートフォリオに組むことが可能です。

ただ、1カ月で0.41%相当というプレミアムでそのオプション取引ができるかどうかは別です。こんなに安い価格で買えるのかどうか……このオプション料が安いということは、逆をいえば外貨仕組預金を利用している預金者は安い価格でしかオプション料を受け取れていないということになります。

そもそも「外貨預金や外貨両替をおすすめしない理由」でも記事にしていますが、外貨預金というのはコストの高い運用商品です。こうした外貨預金に仕組み預金の要素を加えた金融商品のコストはさらに高いものであることは容易に想像がつくところです。

満期特約型の仕組み預金のメリット、デメリット

メリット

  • 相対的に高い金利が受け取れる

デメリット

  • 為替レートが円安に進行すると通常なら得られた為替差益が得られない
  • 途中解約できない(短期なのでそこまで影響はないですが)

販売されている主な同タイプの仕組み預金(満期特約型)

  • パワード定期(新生銀行)
  • 為替リンク預金(ソニー銀行)
  • スイッチ円定期預金(auじぶん銀行)
  • 為替デュアル定期預金(楽天銀行)

余談

メチャクチャ余談ですけど、このタイプの金利がいいけど運用資産がスイッチする系の金融商品って証券会社とかで手数料稼ぎによく使われている印象があります。○○リンク債(日経リンク債)とか、ノックイン債、EB債とかを聞いたことある方いると思います。こういうのって見た目が高金利だけど安定っぽい雰囲気があるので積極的に資産運用はできないけど……みたいなところが買うんですよね。

仕組み預金は個人向けにはデメリットの方が勝る商品と私は考えます

仕組預金は基本的にオプション(権利)を銀行に売ることによってプレミアム(上乗せ金利)を受け取っています。オプション取引においてはオプションの売り手というのは「リスクをカバー(引き受け)」する存在です。

リスクを回避するのではなく、金利というプレミアムを受け取ることでリスクを積極的に引き受けているという商品性であることは理解して運用するべきだと思います。