円安もあって、外貨両替やら外貨預金やらの人気が急上昇しているという話がニュースになっています。円安が今後もさらに進みそうだからということで、とりあえず円を外貨(米ドルなど)に両替したり、外貨預金をしたりする人が増えているそうです。
資産の一部を円ではなく外貨で持つこと自体は全く悪いことではありません。今回のような円安になれば一部の資産を外貨で持っていた人は、大きく資産が増えたことでしょう(今回の円安の場合は資産が増えたというより、目減りしなかったともいえそうですが)。
とはいえ、その外貨の購入を外貨両替や外貨預金で対応しようというのはいただけません。手数料がメチャクチャ高いからです。
外貨預金や外貨両替の手数料はかなり高額だし、税金計算は面倒だし、万が一の時はリスクもあるし良いところがない
世の中の大半の銀行、特に窓口で取引をするようなケースで外貨預金は基本お勧めをしません。
- 為替手数料が高すぎる
- さらに外貨預金は金利も低い
- 税金の計算も外貨預金は面倒
- 外貨預金は預金保険の対象外
というところで良いところがないのです。
為替手数料が高すぎる
為替取引による手数料は仲値といわれるレートに手数料を上乗せして売買します。
- TTB:今売却する際のレート(1ドル=99円)
- TTS:今買付する際のレート(1ドル=101円)
という二つのレートを提示しています。この差が外貨預金の手数料となります。今1ドルを買うなら101円が必要で、今ドルを円に戻すなら1ドルが99円にしかならないという話になります。
つまり勝った瞬間に2円分の手数料分だけ負けた状態からスタートすることになります。たとえば、大手都市銀行の三菱UFJ銀行の外貨預金の手数料を見ていきましょう。
- 窓口:2円
- インターネットバンキング:50銭(0.5円)
となっています。外貨取引に慣れていない方は高い安いはわからないかもしれませんが、参考となる他の外貨決済手段の手数料を並べてみましょう。
- 住信SBIネット銀行(ネット):12銭(0.12円)
- FX取引(DMM FX):0.4銭(0.004円)
圧倒的ですね。
たとえば、1ドル=140円のとき100万円の外貨預金を始めるとしましょう。その時の評価額は買付した瞬間に以下のようになります。
- 三菱UFJ銀行(店頭):98万5815円
- 三菱UFJ銀行(ネット):99万6434円
- 住信SBIネット銀行(ネット):99万9143円
- DMM FX(FX):99万9971円
銀行の窓口で外貨預金すると預金した瞬間に約1万5千円からのマイナススタートです。手数料が安めのネット銀行でも1000円弱のマイナスから始まることになります。
さらに外貨預金は金利も低い
現在、米国では利上げを続けているため米国のドル預金の金利も高くなっています。ところが、この外貨預金の金利水準も実は銀行は手数料を抜いていて低いです。
- 三菱UFJ(外貨普通預金):0.01%相当
- 住信SBIネット銀行(外貨普通預金):0.9%相当
- DMM FXドル円のスワップ金利:3.49%相当
※FXのスワップ金利については、同日のUSD/JPY(ドル円)のスワップ金利1日分を同日の為替レート仲値(146.09円)を元に計算し1年分の年率で計算しなおしたものです。
FXのスワップ金利は1日単位で計算されるので普通預金と同じようにいつでも売却可能です。米ドルとの日米の金利差は現状3.5%近くあるにも関わらず、三菱UFJ銀行の場合、外貨預金をしても本来ならあるはずの金利差の99%以上を銀行側が収奪し、預金者には1%未満しか還元してくれないということになります。
リスクは預金者、利益は銀行ですね。
税金の計算も外貨預金は面倒
さらに税金の計算も面倒です。外貨預金における金利部分については源泉徴収をしてくれますが、為替差益(差損)という為替レートの変動によって発生した利益や損失の申告は預金者が自分自身でする必要があります。計算書なども銀行はくれません。じぶんで集計して申告をする必要があります。
一方でFXについても申告は必要ですが、年間損益報告書を用意してくれるので確定申告の場合は書類の通りに入力するだけでOKです。
外貨預金は預金保険の対象外
いや、でもFXとかより安全だと思うし……というお声もあるかもしれません。ところが外貨預金というのは預金保護の面でも実は弱いのです。
外貨預金は銀行の預金保険の対象外です。万が一銀行が破綻するようなケースがあればその預金は保護されません。破綻するようなケースでは戻ってこない可能性の方が高くなります。
一方で外貨建ての有価証券(債券や株式、投資信託など)であれば金融機関(証券会社)は自己資産とは別に「分別管理」が義務付けられているため預けている証券会社などが破綻した場合でも保護されます。
さらに、証券会社が分別管理を怠っていたようなケースでも日本投資者保護基金による保護もあります。
やっても良い外貨預金
外貨預金全部NGというわけじゃないです。それ以上のメリットがあるケースではやってみる価値はあると思います。
具体的にはポイント還元などのキャンペーンが強い銀行。あるいは別のルートでの外貨預金の使い道があるケースです。
auじぶん銀行の外貨預金
外貨預金(積立)によってコストを上回るポイント還元が期待できるタイプの銀行です。手数料を除いても毎月1000円以上のプラスリターンが期待できます。こちらについてはちょっと複雑なので以下の記事をご覧くださいませ。
参考:auじぶん銀行 じぶんプラスを攻略 毎月Pontaが貯まる銀行ポイ活が可能
ソニー銀行の外貨預金は外貨決済に強み
ネットバンクの「ソニー銀行」は外貨預金とその決済性に優れています。外貨預金として預金している残高はソニー銀行のデビットカードを通じて外貨決済が可能です。海外旅行の際はもちろん、海外のECサイトでお買い物をするというようなケースでは使えるかもしれません。
外貨両替は論外
もう一つ、外貨両替も売り切れ続出なんて話もありましたけど、外貨両替は外貨預金以上にないです。たとえば成田空港グループ直営のGPA外貨両替専門店のレートは以下の通りです。
- 円→ドル:148.85円
- ドル→円:143.45円
売値と買値の差、つまり往復手数料は5.4円です。もともと高い手数料の三菱UFJ銀行の外貨預金の2倍以上。仮に100万円分の米ドルを購入したらその価値は瞬間で96万3721円と4万円弱も目減りすることになります。
ドル紙幣を買っておいて将来買い物に使う、ということも考えられるかもしれませんが、今はキャッシュレス決済を含めてもっと低コストで外貨決済できる手段はあるわけなので外貨紙幣を円安対策として買う必要性は極めて薄いです。
じゃあ、円安対策で外貨投資はFXでするべきなのか?
ここからは私の私見も含みます。相場に関することなので一つの意見として読んでいただければと思います。
円安対策として外貨投資をする際、ドルを直接買いたいのであればFXが一番良いと思います。レバレッジ投資によるリスクという問題はありますが、最近のFXは最低1000通貨単位くらいで投資できるところ多いので15万円単位くらいで投資が可能になっています。
特に、短期でFXでガンガン取引して利益を出すぜ!!とうようなマネーゲーム(投機)をしたい方はFXでやってもらってよいと思います。それならFXでやるべきです。
参考:DMM FX
一方で資産運用として長期目線で投資をするなら個人的には外貨の直接投資よりも外貨建ての投資信託などへの投資の方が優れると思います。
今のような円安の時に米ドルなどの外貨を直接買うというのは、メチャクチャ安値で円を売っているのと同じことです。暴落相場において投げ売りをするようなものです。
2021年末、ドル円の水準は115.02円でした。本日の仲値146.09円と比較すると27%も円安になっています。一方で円建てで見た時のS&P500(米国の株価指数)は昨年比で+0.62%です。
※2022年10月27日時点
27%も円安になったのに米国株はほとんど上昇していないのです。年末からみてこれだけ円安になっているのだから、100%米ドル建てであるS&P500も、同様に上昇していなければおかしいです。でも上昇していません。それはなぜかというとドル建ての株価が下がっているからですね。
金利が上昇したことにより米国企業の業績に対する先行き不透明感が広がって株価が落ちているわけです。金利と株価は表裏一体の面があります。安くなった円をそのままドルに換えるよりも円は安くなってしまったけど、同じように安くなってしまった米国株(S&P500)を買うというのも一つの選択肢かと思います。
こうした米国株への投資であれば各証券会社を通じて投資信託の積立投資ができます。円建てですが、投資しているのは米国株になりますので実質的には米ドル投資をしているのと同じことになります。
クレジットカード積立投資などを活用すれば毎月の積立で時間分散をしながらさらに、ポイント獲得までできるので長期の資産形成にもより有用に働くはずです。