FXというと為替レートの動きによる差益を狙うというゴリゴリのトレード収益を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、FXの攻略法の一つとして知られている投資法の一つに同一通貨を両建てすることによってスワップポイント(金利差)だけを稼ぐという手法があります。
両建てというのは「買い」と「売り」の両方のポジションを持つことです。この両建て状態になると為替レートが円安に動いても円高に動いてもそれぞれの合計ではプラマイゼロとなり為替レートの影響を受けなくなります。
じゃあ、どんな意味があるのか?と言われるとスワップ金利の鞘取り(アービトラージ)です。FXでは買い建て、売り建てによってスワップ金利という金利の支払いと受け取りが発生します。この差がプラスになるようにするわけです。
ただ、払う金利より受け取る金利の方が大きいなんてことは可能なのでしょうか?可能です。
今回はそんなFXの両建てを利用したローリスクなFX攻略法を紹介していきます。
- FXの両建てによる金利アービトラージ戦略
- FXの買いスワップと売りスワップがプラスなら両建てで儲かる
- FX両建てによる金利アービトラージのリスク、デメリット
- FXの両建て スワップ金利のアービトラージが1社でできるLIGHT FX
FXの両建てによる金利アービトラージ戦略
アービトラージというのは日本語では裁定取引とも呼ばれます。金利差、価格差に注目をして割安なものを買い、割高なものを売ることによって両方に生じている差(サヤ)を抜こうとする投資手法のことです。
FXの金利アービトラージは同じ通貨ペアにおいて買いポジション(ロング)と売りポジション(ショート)において発生するスワップ金利の違いを利用してこの差益を狙うというものです。
スワップ金利(スワップポイント)とは?
専門用語っぽいのがいくつも出てくるのでわかりづらいですよね。ということでいくつか解説していきます。スワップ金利というのは金利差の交換です。
たとえば日本(日本円)の金利が1%、米国(米ドル)の金利が5%だとしましょう。この金利は政策金利と置き換えても大丈夫です。このように各国間の通貨には金利差が生じるのが普通です。
仮に1ドル=140円の状態でこの時ドル円(USD/JPY)の1万ドル分の買いポジション(ロング)を建てたとしましょう。これは円を売ってドルを買っているという状態です。ただ、FXは証拠金取引ですから、実際に私たち投資家はお金は1円も出していませんよね?
つまりこのポジションを建てているというのはFX業者から140万円(1万ドル×140円)を借りて、1万ドルを買ってその1万ドルはFX業者に預けているという状態になるわけです。
この時、各国通貨間の金利差が問題になります。ドル円の買い建てであれば1万ドルを貸して140万円を借りているので、それぞれの通貨の金利差を交換する必要があります。ドルは5%、円は1%なので、金利差は4%です。ドル円の買い建てをしている状態であれば金利の高い米ドルを貸している状態になるわけなのでこの4%分の金利を受け取ります。これがスワップ金利です。
なお、ドル円を買い建てしたケースではこのスワップ金利を受け取りましたが、逆に売り立て(ショート)をした場合は1万ドルを借りて140万円を貸している状態になるため1%-5%=-4%となり、4%分の金利を投資家は支払う必要があります。
図にすると以下のような感じになります。それぞれの金利の差分をやり取りするわけです。
引用元:SMBC日興証券
ちなみに用語として買いポジションでもらえるスワップ金利のことを「買いスワップ」、売りポジションでもらえるスワップ金利のことを「売りスワップ」と呼びます。また、実際に受け取れる金額のことをスワップポイントと表現します。
スワップ金利は事業者によって差がある
さて、このスワップ金利の水準は業者がある程度自由に決めています。
そのため、業者間によって差があります。
たとえば、マネーパートナーズの9月26日のスワップ金利は以下の通りです。
米ドルだとたとえば買いなら1万ドルあたり184円を受け取れますが、売りなら459円のい支払いが必要になります。これはスワップポイントを結構中抜きしていますね……。
一方で続いてはLIGHT FXのLIGHTコースのスワップ金利です。同じ米ドルでも買いスワップは245円、売りスワップは-245円となっています。スワップが同額ということは金利相当を抜いていないということになりますね。
このようにスワップ金利はFX会社によって差分があります。
FXの買いスワップと売りスワップがプラスなら両建てで儲かる
このスワップポイント、FX会社において結構差があることがわかりました。
中でも投資家に対して有利なスワップポイントを提供している会社で、同じ通貨の買いスワップと売りスワップの合計がプラスになる場合、それぞれのFX業者で買いと売りを同一数量で行う両建てをすれば、為替レートの変動に対して中立となった上でスワップ金利分が儲かります。
たとえば、以下の組み合わせを見てみてください。
※以下は記事投稿時点の数字です。現在のスワップポイントではありません。
①LIGHT FX メキシコペソ買いスワップ:28.1円
②楽天FXメキシコペソ売りスワップ:-23円
※調査日時点の数字です。
このケースならLIGHT FXでメキシコペソを買い、楽天FXでメキシコペソを売れば1日当たり5.1円相当の利益が生まれるということになります。これがFXのスワップポイントの差を利用したアービトラージ戦略となります。
レバレッジをきかせることで資金効率がアップ
毎日数円の利益というのは小さいように見えますが、FX取引は「レバレッジ取引」です。最大で預けたお金(証拠金)の25倍までの取引が可能です。
仮に10万円を預ければ25倍の250万円までの取引が可能です。たとえば先ほどのメキシコペソの例でいえば、およそ1メキシコペソ=8.5円だとすると最大で14万メキシコペソ(の両建てが可能です。ということは1日に14lot×5.1円=71.4円。年間で2万6061円の利益になります。元本(証拠金の10万円)からみると26%相当となりかなり高い水準のリターンを為替リスクなしで受けられることになります。
ちなみ、以下で説明しますがフルレバレッジ(上限ギリギリまでの投資)はお勧めしません。レバレッジを落とすとその分だけリターンは小さくなります。
FX両建てによる金利アービトラージのリスク、デメリット
メリットを中心に解説してきましたが、必ずしも良い点だけではありません。以下のようなリスクや手間も考慮しておく必要があります。
- 強制ロスカットされないための資金管理と安全マージンの設定
- 売買時のスプレッド(手数料)の回収期間がある
- スワップ金利は固定ではないため金利差の監視が必要
強制ロスカットされないための資金管理と安全マージンの設定
FXの両建てを利用した金利アービトラージの最大の注意点は強制ロスカットです。
買いと売りを組み合わせている場合、両方の合計では損益はイーブンになります。ただし、為替レートが一方的に動くような場面では片方のポジションでは利益が、もう片方のポジションには損失が発生することになります。また、高金利通貨を買っている方のポジションにはスワップ金利の受け取りが生じますが、売っている方のポジションには支払いが生じ、その分はマイナスとしてカウントされます。
2つのFX会社で両建てのポジションをとる場合、片方の業者では利益、もう片方の業者では損失が出ていることになります。
この場合、損失が出ている業者の方には資金を入れていかないと証拠金不足による強制ロスカットされてしまうリスクがあります。マイナスが出ている口座の方には資金を追加するなどして定期的なメンテナンスが必要です。また、相場の急変やスプレッドの急拡大などによって追証や強制ロスカットされないように多少の安全マージンを設定して余裕をもった証拠金を入れておく必要があります。
なお、後述するLIGHT FXなら1社で両建てできるのでこの損失累積による問題は回避できます。
証拠金維持率と追証、強制ロスカット
FXでは、原則として証拠金維持率が100%を超えておく必要があります。「証拠金維持率=純資産÷必要証拠金」で計算できます。
さらに、それぞれの数字は以下のように計算をします。
・必要証拠金=ポジション÷25
・純資産=預託証拠金残高+約定評価損益-出金予約額
純資産は預けているお金から評価損益を差し引きます。つまり、両建てでスワップポイントの支払が累積すると徐々に減っていきます。つまり時間が経てば経つほど純資産は減少するため、証拠金維持率が下がります。
維持率が100%を下回ると追証といって追加の証拠金の入金が求められます。また、相場の急変などによって50%を下回ると強制ロスカットといって強制的に清算をされてしまいます。
※とはいえ、余裕を持ちすぎると資金効率が悪化するのでそこは悩みどころですね。
売買時のスプレッド(手数料)の回収期間がある
FX金利アービトラージ戦略ですが、初期投資時のコストがあります。それはスプレッドコストです。
引用元:SMBC日興証券
上記画像で言えば1万通貨(1万ドル)あたりでかかるコストは0.4銭×10000=4000銭(40円)ということになりますね。
スプレッドというのはFXで為替を売買するときにかかるコストです。この初期コストが最初にかかるため最初は必ずマイナススタートとなります。なお、スプレッドコストについては別途支払いではなく、評価額のマイナスとして表現されます。
どのくらいの期間でこのスプレッドコスト分のマイナスをカバーできるかについてはコストの大きさやスワップ金利差によって変わってきます。
スワップ金利は固定ではないため金利差の監視が必要
FX業者のスワップ金利の水準は毎日ガラガラっとダイナミックに変動することはなく基本的にはほぼ同じ水準となっています。ただし、時として大きく変動することがあります。
金利差で黒字をキープできているかの確認が必要になります。
毎日毎日要チェックとまでは言いませんが、週に1回、少なくとも月に1回くらいは金利の状態を確認するくらいのことはしておくとよいでしょう。なお、対象国である日本や相手方通貨の政策金利が変更されると水準がガラッと変わってしまうこともありますのでご注意ください。
FXの両建て スワップ金利のアービトラージが1社でできるLIGHT FX
ここまで紹介した、FXのスワップ金利(スワップポイント)を利用したアービトラージ戦略を1社でやれてしまうというFX取引会社があります。それが「LIGHT FX」です。トレイダーズ証券が提供しているFXサービスですが、こちらだと上記で紹介したFXのスワップ金利のアビトラが1社でできます。
これによって面倒な資金管理や、スワップ金利差の管理が1社だけでできてしまうため、大変簡単に両建てが可能となります。複数社でFXの金利アービトラージをするのは上級者向けですが、1社だけでやる取引なら管理もカンタンです。
LIGHT FXの通常モードとLIGHTモードはスワップ金利が異なるため1社で金利アビトラが実装可能
LIGHT FXでは「通常モード」と「LIGHTモード」という二つの取引形態があり、それぞれでスワップ金利に違いがあります。通常モードよりもLIGHTモードの方がスワップ金利が高く設定されています。
これを利用し、LIGHTモードで買いそして通常モードの方で売りをすることで差益がプラスになる通貨ペアが出てきます。
実際のデータについては公式サイトでも確認できますが、スプレッドシートに私がまとめています。
たとえば、上記の2024年9月11日現在の数字では以下のような組み合わせが黒字化されています。
- GBP(ポンド):1日あたり10円の差益
・投資回収18日
・レバ5倍時の年利0.47% - トルコリラ:1日あたり18.9円の利益
・投資回収17日
・レバ5倍時の年利39.53%
このようになります。GBPは別としてトルコリラ強いですね!
つまり、LIGHT FXのLIGHTモードでTRY/JPY(トルコリラ円)を1万通貨ロングし、通常モードでTRY/JPY(トルコリラ円)を1万通貨ショートすれば1日あたり18.9円のスワップポイントを受け取ることができるわけですね。
※最低取引単位のことをlot(ロット)と呼びます。以下1ロット=1万通貨と読み替えてください。
LIGHT FXの両建てアビトラ運用可能な通貨ペアと想定利回り、コスト
想定コストや
現在、回収期間と利回りのバランスが良いのはハンガリーフォリント、チェココルナでしょうか。この2つはキャンペーン金利ということなので、ある程度期間がたつと金利差が剥落する可能性はありますが、LIGHT FX社のキャンペーン的に考えても当面はプラスの金利が維持されるのではないかと思います。
どちらも安定している通貨とは言えないのでフルレバではなくある程度余裕を持ったレバレッジ管理をしてくださいね。
※スワップ金利は変動しますので参考程度にご利用ください。
なお、最新のLIGHT FXのスワップ金利については「こちら」から確認できます。余談ですが、こういうデータってGoogleスプレッドシートなどで自作すると確認の手間などを減らせるのでおすすめです。私は日々のLIGHT FXのスワップポイントの状況を確認できるシートを作っています。希望する方には閲覧用のURLという形でよけれ共有いたしますのでX(@showchan82)とインスタ(@showchan82)をフォローした上でDM下さい。
最低1万円くらいから最大で数百万まで運用可能
まず最初は少な目のロットから始めてみましょう。もちろん、FXの経験値や資力が高い人は最初からまとまったロットで取引しても良いです。LIGHT FXの場合、最大で各通貨ごとに300ロット(300万通貨)まで両建て可能です。
FXでロング(買い)とショート(売り)の組み合わせとか金利差とか難しい内容に見えるとは思いますが、このスキームに関しては最低1万円の資金くらいから始めることができ、FX取引の中でも比較的リスクは低めです。
投資の際はスプレッドが開きすぎていないかを確認しましょう。特に早朝はスプレッドが広がりやすいので注意が必要です。不安な方は一度にまとめてやらずに最初は1枚ずつやってみるというのも手です。
LIGHTモードのスプレッド確認
通常モードのスプレッド確認
ちなみにメキシコペソのスプレッドはLIGHTモードが0.18、通常モードが0.30となっている状況が基本です。数字がこれよりも大きいときは取引を控えましょう。