クレジットカードを使った投資信託の購入サービスがドンドン増えていきそうですが、それを使った投資戦略として国内債券型の投資信託(ファンド)を購入した上で即売りしてクレカポイントだけを頂くという方法があります。
ただ、1日とはいえ投資信託を保有するわけですから全くのリスクゼロということはありません。変動が小さいとはいえ、国内債券価格も変動するからです。
じゃあ、実際にどの程度のリスクがあるものなのか?ということについて実際の基準価額の変動から調査してみました。
結論からいうと、クレジットカードのポイント還元率>変動率(リスク)となるので、ポイント目当ての売買には十分な利用価値があります。
即売りであれば毎月積み立てをしている資金力が十分でない場合でもポイントだけを獲得することが可能です。ポイントはそのポイントを現金化したりあるはポイント投資やポイント運用に使うこともできます。
- クレジットカードでのポイント還元だけを目的に国内債インデックスファンドを買うのはアリか?ナシか?
- そもそも即売りってしてもいいの?凍結とかされたりしないの?クレジットカード規約に抵触したりしない?
- 即売りを前提と考えたときにお勧めの国内債券型の投資信託
- 国内債券投資信託&クレジットカード積立(ポイント還元付き)は基本的に損しなそう
- 三菱UFJ銀行の投信積立も同スキーム利用可能?
- ただし、債券ファンドは預金ではない。金利上昇で価格下落リスクあり
クレジットカードでのポイント還元だけを目的に国内債インデックスファンドを買うのはアリか?ナシか?
今回の調査の目的は、クレジットカードを使って投資信託を購入することができる証券会社で長期的な保有を前提ではなく、ポイント目当てだけで買うのはアリかどうか?を調べるのが目的です。
わたしも「 楽天カード+楽天証券の積立投資で年間6000円分の楽天ポイントをお得に貯める方法 」で記事にしていますが、楽天証券×楽天カードで国内債インデックスファンドを買って即売りすれば月500P(年間6000P)分の利益が出るというお話があります。
この超短期(1日保有)でポイント分だけ利益を出すって話が本当にうまくいくのか?少なくとも1日保有することで損をすることはないのか?損をするとしたらどの程度の損失がでるものなのか?ということを見ていきたいと思います。
また、2021年6月~SBI証券×三井住友カードでのクレカ積立も始まりました。また、2022年2月~マネックス証券でのクレカ積立もスタートしています。
どのくらいの還元率があればやる価値があるのか?ということも調べたいと思います。なお、過去のデータによる数字であり、将来にわたってそれが言えることを確約するものではありません。
また、ここで紹介している即売りというのは、投資(運用)というよりもポイ活に近い考え方です。
金銭的に積立投資していく余力があるのであれば、世界株式や全米株式などで積立投資をしていくほうが長期的には良い結果につながると思います。
そもそも即売りってしてもいいの?凍結とかされたりしないの?クレジットカード規約に抵触したりしない?
そもそもそれ以前にクレジットカードで投資信託を購入して即売却するのってやってもいいの?という疑問もあるかもしれません。
クレジットカードにはカードショッピング枠の現金化をNGとするルールがあります。購入&即売りという行動が場合によってはそういう現金化行為として利用停止などの対応を受ける可能性も心配されている方もいるかもしれません。
結論からいうと即売りが規約違反となる可能性は極めて低いと考えています。
投資商品の購入&売却に関するタイミングは投資家の自己判断によるものなので、いつ売るのも勝手です。というか売却のタイミングをカード会社が規制すると非常に問題です。その分だけ投資家がリスクを負うことになるわけですから。
また、証券会社がクレジットカード会社に売買情報を教えるわけはありません。そんなことしたら大問題です。もし証券会社が何らかの対応をするとするのであればクレジットカードで購入した投資商品を売却した場合、一定期間の出金制限を掛けるということくらいだと思います。実際にエポスカード×tsumiki証券の場合はそのようにしていますね。
とはいえ、どうしても気になるというのであれば、保有期間を延ばす(即売りはしない)という運用方針にされたら良いと思います。国内債券ファンドは前述のようにそう大きくうごくものではありません。数週間、数か月運用してから売却するみたいな方針でもよいかもしれません。
即売りを前提と考えたときにお勧めの国内債券型の投資信託
クレジットカードで投資信託を購入して即売却するというのであれば、オススメなのは「国内債券型」の投資信託となります。
- 円建なので為替レートの影響を受けない
- 債券価格は比較的安定している
というのが理由です。もっとも、時には1%近く動くこともないわけではないです。ただ、ケースはまれですし、株式投資信託と比較すると変動率は低いです。
(例)eMAXIS Slim国内債券インデックスとは
今回の調査で参考にしたのは三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim 国内債券インデックス」です。日本国内の債券市場の値動き(NOMURA BPI総合)に連動するように運用されているファンドで、信託報酬(保有コスト)は0.12%と優秀なファンドです。
データについては「こちら」からCSV形式でダウンロードできるようになっています。ご自身でチェックしたい方はどうぞ~。
ちなみに以下のような債券ファンドも同じようなものです。()内は信託報酬。
- <購入・換金手数料なし>ニッセイ国内債券インデックスファンド(0.132%)
- たわらノーロード 国内債券 (0.154%)
国内債券型投資信託の日々の変動の平均値(期待値)は?
設定来の2017年2月17日~2021年2月5日までの963営業日分のデータで検証しました。
- 1日あたりの平均変動率:0.002%
まず、期待値は0.002%という僅かな数字ですがプラスになっています。
ただ、この平均値だけでは判断はできません。大切なのは1日当たりどのくらい変動するのか?というリスクの大きさだからです。+10%動いた翌日に-10%変動すれば変動率(平均)は0%になるからです。
保有する期間が1日でしかない投信の即売りにおいては、日々の変動のブレ幅を知ることがより重要です。
1日あたりの、eMAXIS Slim国内債券インデックスのリスク(ブレ幅)はどの程度?
リスクを考えるにあたり、まずは本債券ファンドの変動の分布をヒストグラムにしてみました。ヒストグラムは分布を調べるときに役立つ統計グラフです。データのバラツキを調べるのに役立ちます。同投資信託の1日あたりの変動率のヒストグラムは以下のようになります。
0.00%付近を頂点に山形になっています。これは一般型と呼ばれる形でデータに一貫性がある場合に表れやすい形です。正規分布(データが平均値付近に集まるデータ分布)に近い形状といえそうです。
なので、この1日単位の変動を標準偏差にしてみました。標準偏差というのはデータのバラツキがどの程度あるのか?を示す指標です。これが大きいほど、1日あたりの変動が大きいということになります。
- 1日あたりの標準偏差:0.117%
eMAXIS Slim 国内債券インデックスの1営業日ごとの変動の標準偏差は0.117%です。
変動が正規分布の場合、平均値±標準偏差というものが、約68%の確率でその範囲で変動するということを意味します。平均変動率の0.002%から考えると約68%の確率で1日の変動率は-0.115%~+0.119%の範囲で動くということを意味しています。
なお、標準偏差の2倍にすると約95%の確率で収まることになります。この変動幅は-0.232%~+0.236%の範囲となります。
ここからわかる通り、国内債券ファンドの1日あたりの変動幅は殆どのケースで±0.2%の範囲に落ち着くということになります。
過去の変動におけるマイナス変動の最大値とマイナスとなった回数
とはいえ、極端な変動が起こらないわけではありません。次は実際に過去の変動でマイナスになった日についてみてみましょう。
期間中で1日あたりで最大のマイナスを記録したのは2020年3月10日の-0.778%です。
これは新型コロナウイルスによる混乱で株価も大混乱、NY市場は一時取引停止なった日ですね。私たちの記憶にも新しい出来事です。
ちなみに、同日の米国株(S&P500)は7%以上下落しサーキットブレーカーが発動したというような金融マーケットが大混乱を起こしたタイミングです。ただ、そういう日であっても国内債券型投資信託の変動は1%にも至っていません。
実際にマイナスとなった回数をレベル別に見ていきましょう
- -0.5%以上マイナス:5回
- -0.4%~-0.5%のマイナス:1回(6回)
- -0.3%~-0.4%以上マイナス:8回(14回)
- -0.2%~-0.3%以上マイナス:19回(33回)
n=936。()内はそれ以下のマイナスを累計したもの
確率でいえば、-0.2%以上のマイナスとなった回数は全体のわずか3.43%にすぎません。-0.5%以上のマイナスになったのは全体の0.5%です。
ちなみに、マイナスのことを書きましたが逆にプラス方向に動く可能性だって当然にあります。
国内債券投資信託&クレジットカード積立(ポイント還元付き)は基本的に損しなそう
以上から考えると極端に運が悪い人たまたま踏んでしまった場合にはマイナスとなる可能性もあり得ますが、回数をこなせばその変動率も平均に回帰していきます。
毎月積み立てをして即売りをしてポイント獲得ということを続けていけばたまたま運が悪くマイナスになる月があったとしても、数カ月と同じようにやっていけば改善するはずです。
同ファンドにクレジットカードで投資できる証券会社は以下の通りです。
- 楽天証券×楽天キャッシュ:1%還元
- 楽天証券×楽天カード:0.2%、1.0%還元
- SBI証券×三井住友カード:0.5%~5%還元
- マネックス証券×マネックスカード:1.1%還元
- auカブコム証券×auPAYカード:1%還元
以上を考えますと、楽天証券はもちろん、SBI証券やマネックス証券でもとりあえず5万円分で国内債インデックスファンド買って即売りだけでもやっておくほうがポイント分得できそうということになりそうですね。
なお各社のクレカ積立投資の特徴や選び方については「クレカ積立のおすすめ証券会社比較 クレジットカード積立投資のメリット、デメリット」の記事なども参考にしてみてください。
ちなみに、国内債券型の投資信託が選べないクレカ積立の場合はなるべく今回のようになるべく変動率が低いファンドを選ぶと良いです。
- 国内債券ファンド
- 海外を含む債券ファンド(為替ヘッジ付き)
- バランス型ファンド
この順番で検討していきましょう。
たとえば、tsumiki証券(&エポスカード)であれば「まるごとひふみ15(株式割合が15%の株式・債券ファンド・一部為替ヘッジ付き)」というように変動率の高い株式の割合が低いものを選ぶようにすると良いです。
三菱UFJ銀行の投信積立も同スキーム利用可能?
ちなみに、三菱UFJ銀行でも2021年6月13日より投信買い付けでPontaポイントがたまるサービスが始まっています。
1万円につき30Pontaポイントということで0.3%相当になります。還元率はやや低めではありますが、投資額の上限が10万円とやや大きいです。前述のように標準偏差的には0.12%程度なので、0.3%分のポイント還元でも利益が出ると考えられます。
参考: 三菱UFJ銀行でPontaポイントが貯まる銀行ポイ活。投信関連のポイント還元はポイ活投資におすすめ
ただし、債券ファンドは預金ではない。金利上昇で価格下落リスクあり
一方で注意しておきたいのは債券というのは預金のように変動がない商品ではなく、金利(市場金利)によって価格は変動します。
上記は令和元年~令和5年9月末までの債券利回りの推移です。マイナス金利からから9月現在だと0.8%に近い水準になっています。これは利回り上昇=債券価格下落という構図になるので債券投信をそのまま長期保有していた方はそこそこのマイナスになっているはずです。
このように投信ファンドは金利の変動によって元本が変動するため長期保有には一定のリスクがあります(もちろん、逆に金利が下がれば価格が上昇するわけです)。
即売りと割り切るのであれば割り切ってすぐに売却、そうでないのであればちゃんとリスクをとった運用をしていくのが良いと思います。