生命保険って最近では特にマネーリテラシーの高い人から無駄なコストということで毛嫌いされる傾向が強いですね。
保険という金融商品はリスクに対して備えが十分であれば不要だと考えます。というか、保険というのはそもそもリスクに対して備えが十分でない人が利用するべき商品なのです。
リスクというのは不確実性です。世の中には不運な目にあう可能性というのは誰にしもあり得ます。そうした不運の中でも発生したらそのリスクを自分自身で抱えきれないような大きなものがあります。たとえば、若くして大病を患う、交通事故に遭う、自然災害の被害に遭うなど様々な好ましくないリスクを抱えています。そしてその多くは自分で100%コントロールすることはできません。
そのような「確率は低いけれども発生したときの損害が大きな問題」というものをカバーするのが保険という存在です。
保険は基本的に外れて嬉しい宝くじ
保険というのは例えるのであれば外れて嬉しい宝くじです。
少ないく確率の万が一の不運が発生したときに保険金が下りるからです。
なので、原則的には掛け金である保険料が無駄になることはそもそも当然の事ではあるわけです。1%の不運に見舞われた人を残りの99%の人が支える仕組みだからです。
もちろん、実際には保険会社の手数料というコストがある分、期待値としてはマイナスとなるわけですが、商品性としてはお守りなわけです。
生命保険を解約してもいい人と保険が必要な人
保険は期待値はマイナスとなる商品です。なので、そうした不運に対しての備えが十分であれば保険は不要となるでしょう。
一方でその不運に対しての備えができていない人は保険は必要です。
備えというのは何かというと十分な現預金(すぐに換金可能な資産)です。これが当該リスクに対して十分なら保険は不要であり、不十分なら保険は必要だと考えるべきです。
- 事故における対人・対物の補償:~億単位
- 火事や自然災害で家財が被害を受けた際の補償:~数千万
- 小さい子どもに対する生活補償:~数千万
- 自分が長期間にわたって就労できなくなる収入補償:数百万
- 大病を患った際の治療費・生活費:数十万~数百万
このように比較的大きなリスクに対しての金銭的な備えがある人は保険は不要です。車を運転する方で任意保険に加入する方が大半であるのは万が一の場合のリスクが大きいからですね。火災保険なども同様です。
万が一の生命保険は逓減型、そして資産形成に従って必要性は減少する
子育て中の方は自分に万が一のことがあった時に自身の遺産で子どもを養育できるというケースを除けば一定の死亡保険は必要だと考えるべきです。その金額は「子どもの人数」×「子育て期間」でざっくりと計算することができます。
子どもが成長するほど、必要な保険金額は少なくなっていきます。また、ちゃんと資産形成ができていれば、その資産でリスクをカバーできるわけですから必要な保険金額も少なくて済むようになります。
なので、生命保険は基本的に「逓減型(時間が経つほど保険金額が小さくなるタイプ)」がおすすめです。逓減定期保険というような保険もありますが、厳密にやらずに定期保険(掛け捨て一定期間の死亡保険)を10年単位くらいで徐々に保険金額を下げていくみたいなやり方でも問題ありません。
子どもが小さいうちはその後の養育期間も長くなりますし、学費等も必要になるので保険金額は大きめが必要。一方で、子どもが既に独立したという状況なら養育のお金は必要ないわけで、生命保険はごく小額(ないしは不要)と言えるかもしれません。
医療保険は一定の貯金があれば必要性は低いけど、それによる収入低下には備えが必要
一方で医療保険と言われるタイプの保険は実は必要性は高くありません。日本は公的な医療制度が整っていますし、高額療養費制度などのセーフティーネットもしっかりしています。治療費については数百万程度の余裕資金があればほとんどをカバーできると思います。
一方で治療によって収入が経たれてしまうような仕事をしている方は話は別になります。治療費自体はカバーできても、それによって自身に収入にダイレクトに影響するような場合はそうしたリスクも考えておく必要があります。
サラリーマンの場合は一定期間は傷病手当金(療養中の収入保障)という制度もありますが、自営業の方などはこうした制度は使えません。
収入保障保険や就労不能保険といったような収入を補償する保険などを検討するのも一つです。
夫婦は収入のバランスに応じて弱い方にも配慮を
また、これはメンタル的な話も含みますが、保険というのは最初にも書いたように「お守り」です。夫婦においてどちらかが一方的に稼いでいるようなケースでは、正論(保険は無駄)をはくことができるのは自分が強者だからという点は意識しておくべきです。
理屈(期待値)では正しいという場合であっても、それが夫婦関係において最善であるとは限りません。程度問題はあるでしょうが、少し経済的に弱い方に寄り添っておく方がいいんじゃないかなーというのは私の個人的な考えです。
とはいえ、保険料で生活苦というのは本末転倒
程度問題もあります。まったく貯金する余裕もないのに万が一のために保険料を支払いキツキツの生活を送れというつもりはありません。
保険は万が一のための備えですので優先順位としては以下のようになると考えます。
「今の生活のためのお金」>「近い将来のお金」>「未来・老後のためのお金・万が一のためのお金」
あくまでもリスクに対する備えですから、それに備えるより前に現在の生活が苦しいというのは本末転倒です。
保険は絶対的に悪い商品ではなく、資産運用と組み合わせてプランニングすべき
たとえば資産運用手段のiDeCoやるなら生命保険は不要というようなご意見も耳にしますが、この二つは性質が違います。
iDeCoは生きるリスク、生命保険は死ぬリスクに対する金融商品です。
iDeCoは仮に1年後に死亡した時にもらえるお金は1年分の積立分だけ。サラリーマンなら満額掛金でも28万円くらいですよね。一方で死亡保険なら3000万円の死亡保険なら加入期間が1年でも3000万円がおります。そもそも金融商品の性質(目的)が違うわけです。
保険はそのコストの高さから無駄だと断罪されることも多いですが、ここまで紹介したように一つ一つの家庭の状況によって必要性は大きく変わります。とにかく無駄だから不要と言い切るのは少し乱暴です。
税制上の優遇も見逃せない
また、保険という民間のセーフティーネットは国としても優遇しており、税制上の優遇も行っています。
生命保険、年金保険、医療保険の保険料を支払っていると所得控除といって税金が安くなる仕組みがあります。保険金額に応じての控除があるため、この控除と税率を考えると保険を利用することで節税ができたり、所得制限のある行政の支援が受けられるケースもあったりします。
本記事の本題とは少しそれるので深くは別記事で書きたいと思いますが、うまく使えば保険も有利な運用手段となるケースもあります。
中には「じぶんの積立」のようにあからさまな個人向け節税保険もあったりして、保険は不要だという場合もうまく使える保険も実はあったりするので、そうした商品も上手に活用しましょう。