長期の資産運用の手段としてはiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)、つみたてNISA(小額投資非課税制度)が注目されます。
どちらも投資の運用益などが非課税となる制度です。
上手く活用することで、資産形成のスピードを大きく加速することができます。ただ、どちらにも一長一短がありますので、上手く使い分けをしていきましょう。
なお、一長一短があると書いたように、明確にどちらが強い、弱いというのはありません。結論をいえば「人による」という話になります。つみたてNISAが良い人もいれば、iDeCoが良い人もいます。
その人がおかれている経済的状況、資産状況、家族構成、余力など総合的に見なければ「これだ!」という案内はできません。この時期はその判断をするための材料の一つになれば幸いです。
今回は長期の資産運用におけるイデコとつみたてNISAの違いを比較し、その使い分けの方法を紹介していきます。
- つみたてNISAとイデコはどちらも運用益が非課税となる
- つみたてNISAとイデコは同じ積立投資でも目的が違う
- 税制上のメリットが大きいのはイデコ、でも自由度が高いのはつみたてNISA
- イデコと、つみたてNISAはどう使い分ける?
- イデコ、つみたてNISAはどこで始める?口座開設のやり方
- 自営業やフリーランスの方は小規模企業共済も検討を
つみたてNISAとイデコはどちらも運用益が非課税となる
株や投資信託で資産運用するときに、税制上の優遇を受けるというのは極めて重要です。税金というのは確実に発生するコストで、それによって投資(資産運用)においてマイナスの運用リターンを生むことになるからです。
たとえば、投資の運用益に対する課税は株や投信の場合20%です。つみたてNISAもイデコもどちらもこの運用益が非課税となります。
仮に年利5%で運用できたとして、課税された場合とされなかった場合には大きな差がでます。
①毎月3万円を利回り5%で積立(非課税)
→20年後は1233万円
②毎月3万円を利回り5%で積立(最後に課税)
→20年後は1130万円(利益部分が最終的に課税されると仮定)
③毎月3万円を利回り5%で積立(毎年課税)
→20年後は1100万円(毎年利益部分が課税されると仮定)
となります。
①は、つみたてNISAやiDeCoを利用した場合の収益、②は通常の課税口座だけど無分配型のファンドで20年間運用し続けた場合の収益、③は収益を毎年受け取るタイプの運用をし続けた場合です。
同じ利回りで運用しても課税されるのと課税されないのとでは100万円以上の最終的な手取りの差が出てきます。
なお、これは複利効果が働きますので、運用年数が長くなるとさらに影響は大きくなります。
何が言いたいのかというと、投資や資産運用をするのであれば、非課税口座で運用することが重要という事です。また、課税口座で運用するケースでも細かく利益確定するよりは課税を可能な限り繰り延べ(後払いする)ほうが有効です。
つみたてNISAとイデコは同じ積立投資でも目的が違う
イデコ、つみたてNISAはどちらも非課税運用が可能な投資手段ですが、それぞれで特徴が異なります。目的に合わせて使い分けが必要です。
つみたてNISAの特徴
- 運用益非課税のみ
- 途中解約は可能、いつでも投資資金は回収できる
イデコの特徴
- 運用益非課税だけでなく拠出したお金が「所得控除」されるためお給料の税金も安くなる
- 途中解約は不可、受け取りは最短60歳から
- 受け取り時は収入として課税される(ただし、退職所得控除等が利用できる)
こういった違いがあります。どちらにもメリットがあるので、自分にあった方を選択しましょう。
税制上のメリットが大きいのはイデコ、でも自由度が高いのはつみたてNISA
両者を比較する場合、イデコの方が税制上のメリットは大きいです。
掛金が所得控除されるというのは大変強力で、仮に所得税率が20%の方なら住民税(所得割)も含めると掛金の3割が還付されるという計算になります。年20万円払えば6万円がもどってくるわけです。これは大きい!
つみたてNISAの場合は、こうした所得控除は無く、あくまでも運用益が非課税になるだけです。
ただし、所得控除がある分、イデコは資金が強力に固定されてしまいます。掛金は途中で解約できず、最短60歳までは動かすことができません。途中でお金が必要になってもダメです。
一方のつみたてNISAはいつでも投資商品を売却でき、預けている証券会社から出金可能です。資金の自由度はNISAの方が上です。
イデコと、つみたてNISAはどう使い分ける?
まず、現時点で収入がない方はイデコを選択する意味葉ありませので、つみたてNISA一択となります。
ある一定の収入がある方で、 私が考える使い分けは以下の順序だと思います。ちなみに私は余裕があるならどっちもやるべきだと思っています。
- 安定した収入で生活費や万が一の支出はカバーできている
はい→(2)へ
いいえ→貯蓄または、つみたてNISA - 今後数年以内に必要な資金は確保できている
はい→(3)へ
いいえ→貯蓄または、つみたてNISA - 現在、所得税や住民税を支払っている(所得がある)
はい→イデコが優先、余裕があればNISAも併用
いいえ→つみたてNISAがおすすめ
つみたてNISAは1年単位の枠なので短期間で解約(売却)したとしても、売却してしまった分が非課税運用できなくなるというだけで、大きな損はないです(もちろん、株価の下落リスクはあります)。
一方のイデコは取り崩しができないという流動性の低さがリスクとなります。掛金の支払いを止めることはできても、取り崩すことができません。
家計的に余裕があるのであれば、イデコを優先、余裕が小さければNISAを優先という具合でよいと思います。
また、イデコに限った話ではありませんが、税制上の優遇の「所得控除」というのは所得税を払っている人にしか意味がありません。
参考:主婦が個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入するメリット、デメリット
イデコは専業主婦も加入することができますが、所得控除をするべき所得が無いので、一番大事な所得控除という優遇を活かすことができません。よってこうしたケースでは、イデコよりもNISAを優先すべきです。
逆に日本の所得税は累進課税なので、所得が大きい人は税率も高いです。そういう方はイデコによる所得控除の税効果は極めて大きくなります。
イデコ、つみたてNISAはどこで始める?口座開設のやり方
どちらも証券会社に口座を作って始める必要があります。銀行でも利用可能ですが、投資商品のラインナップやコストなどを考えるとネット証券がおすすめです。
つみたてNISAの口座開設
つみたてNISAの場合は、特別な書類は必要ありません(かつては住民票の写しが必要でしたが今は不要)。普通に証券会社に口座開設すればOKです。
おすすめは楽天カードを使って1%分のポイント還元をえながら、つみたてNISAに投資ができる楽天証券がつみたてNISAでは最強だと思います。
イデコの口座開設
続いてイデコですが、こちらはちょっと複雑というか必要書類が多いです。勤務先から証明をもらう必要があるのです。
- 証券会社にイデコの申込
- 必要書類を記入&勤務先に証明をもらう
- 返送
という形になります。
事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書というもので、この証明書を会社からもらう必要があります。
この書類の発行(記入)をしてくれない会社もあったり、言い出しにくい雰囲気などもあってイデハラなんて言葉もあるようです。
投資する/しないなんて話を勤務先の人としたくないって人も少なくなさそうですし、この書類については改善してほしいところですね。
なお、口座開設におすすめの証券会社はSBI証券や楽天証券がやはりおすすめです。
自営業やフリーランスの方は小規模企業共済も検討を
ちなみに、あなたが会社員ではなく、自営業者やフリーランス、中小企業の経営者という場合は、イデコに加えて「小規模企業共済」という仕組みもあります。
こちらは投資ではなく、貯蓄に近いイメージですがイデコと同じように所得控除が活用できるのでおすすめです。併用もOKです。
法人経営者や自営業の方は検討する者良いと思います。
なお、サラリーマンしながら副業(兼業)でビジネスをしているという方は残念ながら加入できません。